競争が激しく黒字化することすら難しいと言われる飲食業界。カフェ業界は、飲食業界の中でも特に難しいと言われる分野です。
そんなカフェ業界において、他の追従を許さず着実に店舗数を増やし続けているのが「スターバックス」。
いつのまにかあたりまのように日常に溶け込んでいるスターバックスですが、多くの大企業が行うようなテレビCMやチラシをはじめとした大々的な広告を見かけたことはあるでしょうか??
なぜ、広告を使わないのにここまで強力にブランドとして認知されていて、店舗はいつも顧客でにぎわっているのでしょうか。それは徹底的にこだわった独自のマーケティング戦略が背景にあるからです。
今回はスターバックスの成功事例を基に、マーケティング戦略及びマーケティング4.0について解説します。
カフェ業界で不動の地位を築いた「スターバックス」
スターバックスコーヒーは、1971年にシアトルで開業した、世界中で展開するコーヒーチェーン店です。いまや世界90ヶ国以上で展開しており、店舗数は27000を超えます。
日本においては1995年に日本法人を設立、翌年1996年には銀座にスターバックスの日本1号店が開店しました。クオリティよりも薄利多売が中心の当時のカフェ業界において、顧客を重視した高級志向・当時としては珍しい店内禁煙等を実施して、女性客を中心に好評を集めて話題になりました。着実に業績を伸ばして日本進出3年弱で店舗数は100を突破。その後本格的に全国展開を目指して現在は1434店舗、4021名のスタッフを有する日本最大のコーヒーチェーンとなりました。
コーヒー愛好家も納得のクオリティ、上質な接客、オシャレな空間等、行き届いたサービスが老若男女幅広い層から支持されており、スターバックスコーヒーのブランドは日本中に定着。カフェ業界において不動のポジションを築き上げました。
スターバックスのマーケティング戦略
スターバックスはもともと世界中で展開しているグローバル企業であり、知名度があるから日本でも成功した。そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、日本に進出した海外飲食チェーンが必ずしも成功しているとは限らず、経営が難航したり撤退を余儀なくされた企業も多くあります。
スターバックスが日本においてブランディングに成功して、ここまで拡大できたのは、徹底した顧客主義を貫いているからです。これこそがスターバックスの中核をなすマーケティング戦略です。
スターバックスはコーヒー店ですが、美味しいコーヒーを提供しているだけではありません。「スタバ体験」と言われる、「店舗で1杯のコーヒーを楽しむ上質な体験」を提供している!
・上質なコーヒー
・1杯のコーヒーのストーリーまで語れるバリスタ(接客)
・空間に流れる心地よい音楽
・座り心地の良い椅子
・オシャレな空間
・Wifi完備
顧客が喜ぶ「スタバ体験」を提供するために、スターバックスは細部に至るまで徹底してこだわってサービス提供をしています。
満足した顧客は何度も店舗に通ってくれるため高LTVを実現、また口コミ拡散により集客やブランディングにも貢献してくれます。
「満足頂いたお客様こそが最強の広告塔」という、マーケティング4.0の概念(顧客の自己実現を提供)を実現している成功例であると言えます。
スタバ体験を提供する店舗こそが情報発信元であるため、ブランド価値を徹底的に高め、また、流行に敏感な人々が集まるエリアを選定するなど、立地にも徹底的にこだわって出店しています。
スタバが出店した周辺の店舗は、その恩恵で売り上げが上がると言われるほどです。
日本上陸以来大々的なマス広告を使用せず、バイラルを中心に業界トップまで成長するには、徹底して洗練されたサービスを継続的に提供する必要があります。
スターバックスの成功主要要因である「スタバ体験」について、次章でもっと詳しく見ていきましょう。
「スタバ体験」を提供するために徹底していること
顧客が喜ぶ「スタバ体験」の提供には、簡単には真似できない徹底した工夫が盛り込まれています。以下にご紹介します。
・徹底的なブランド管理
ブランディングにおいて重要な要素は、「顧客からの信頼」です。特に広告は一歩間違えると顧客からの信頼を裏切る原因となりかねません。
スターバックスは、広告の代わりにありのままをさらけ出しても間違いのない誠実なビジネスを実施することで、顧客からの信頼を獲得しています。
そのためにスターバックスでは、「Our Mission and Value」という行動指針を定めてこれを体現し、現状に満足せず日々成長することで強固にスタバブランドを守っています。
・顧客ロイヤリティの追求
「コーヒーの味」はもちろん、「座る椅子」、「店舗デザイン」、「流れる音楽」、「バリスタとの会話」、「居心地の良さ」、「通いやすさ」、「利便性」等、すべて含めてのスタバ体験です。
洗練された心地よい空間の中で、満足する1杯のコーヒーを楽しむ。メニューの表記には敢えて(S・M・L)のサイズ表記を使わないなど、顧客の探求心をも尊重して、特別な時間を過ごせるように工夫されています。
コーヒーを提供する会話もパフォーマンス。バリスタは顧客からの質問に対し、コーヒーのストーリーまで語ることができると言われています。
・従業員ロイヤリティの追求
「スタバ体験」において店舗スタッフは、顧客に直接サービス提供を行う重要な存在です。
スターバックスは、従業員は大切な「パートナー」と考え、新任のスタッフには70時間もの基礎研修を実施、福利厚生の充実、キャリアパスの提示等、スタッフが自社に誇りをもって働ける環境の構築を行い、なによりもスタッフを大事にしています。
このような取り組みがあるからこそ、自発的に良いサービスを提供しようというスタッフが誕生して、上質な「スタバ体験」の担保に繋がっています。スタバで働くスタッフは、誰もがリーダーやトレーナーといった上級職を率先して目指していると言われています。
命令して締め付けて、「上質なスタバ体験をやれ!」などと言っても、こんにちのスタバの成功は実現できなかったでしょう。
・地域さらには日常に溶け込んでいる
上手く言語化できませんが、スターバックスの店舗は、いかにもスタバらしい場所に自然に存在していませんか?
極端な一等地や郊外ではなく、流行やファッションに敏感な人々が集まりそうな場所を巧みに選んで出店しています。
マーケティングの主軸であるスタバ体験を提供する店舗だからこそ、提供する立地にも徹底的なこだわりが見て取れます。
また、過剰な装飾を控えるデ・ブランディングを施し、さりげなく日常の風景に溶け込んでおり、店内ではコーヒーにイラストを添えたり、地域と繋がるイベントを開催したりと、地域コミュニティとのつながりも大事にする側面も見受けられます。
・高級スタバもスタートして更にプレミアムな「スタバ体験」を提供
スターバックスは、プレミアムなコーヒーのみを提供する高級路線の新サービス「Starbucks Reserve Roastery」を2014年にシアトルでスタート。
その5番目の店舗「スターバックス リザーブ® ロースタリー 東京」が日本でもオープンして、毎日数百組以上の入店待ちが発生するなど、注目を集めています。
シアトル1号店はスタバ史上最も成功した店舗であると言われており、従来のスタバ体験の提供を昇華させ、プレミアムなコーヒーを飲みたいという顧客のニーズに応えています。
スターバックスから学ぶリアル店舗のマーケティング4.0
スターバックスの成功事例から、店舗型ビジネスに活用できるマーケティング手法及び、マーケティング4.0実現へのプロセスを考察してみました。
マーケティング4.0の観点から見ると、スターバックスは自尊心をもくすぐるレベルの上質なサービス「スタバ体験」で、以下のような顧客のニーズを強烈に満たしました。
※日本進出時に想定・設定したといわれる顧客の利用シーン
■朝の儀式とも言える日課の一部
■友人や家族と過ごす場
■ビジネスマンが仕事の延長で気軽に交流を深められる場
■自分へのご褒美としておいしいドリンクを求める場
■煩わしい雑事から逃れ、リラックスするひとときの場
※参考:https://ameblo.jp/b072810g/entry-11649625135.html
近年では「サードプレイス(家庭でも職場でもない第三の場所)」という新しいコンセプトも明確に打ち出されています。
ありそうでない空間・時間を求める顧客の願望をも満たすことにより成功したからこそ、顧客こそが最高の広告塔という、マーケティング4.0の理想形を実現できたと言えます。
大手のような潤沢な経営資源を持っていない小・中規模事業者も活用できそうなエッセンスに特にフォーカスしてみると、以下のような施策はいかがでしょうか?
・強気の価格でも顧客が満足する商品・サービスの設計
・顧客満足度の徹底的な追及から高単価高LTV戦略
・高度なスタッフ教育と従業員満足度の追求によるサービス品質向上
・オリジナリティ追求「らしさ」の演出。他店と比較せず独自路線を行く
・セールスを控えてネガティブな反応を抑える。上質なバイラルからの集客を目指す
・広告ではなく顧客とのコミュニケ―ションを目的としたデジタルマーケティング活用
・立地への徹底的なこだわり(新規出店・拡大時)
スターバックスは競争に勝利して、シェアを獲得して成功したようにみえますが、実はそうではありません。他店舗やその商品を引き合いに出すことは決してありません。
価格競争しないビジネスモデルを設計することにより、価格競争に巻き込まれることを防ぎ、消耗戦やサービス品質の低下も防ぐことが期待できます。
多店舗との競争という概念を覆すマーケティングであるとも考えられますので、特定地域で展開するローカルビジネスも参考にできる部分は非常に多くあります。
「どのようなニーズがあるのか?」「それを満たせるプロダクトを作るにはどうしたらいいか?」この辺りから探ってみると、マーケティング4.0の実現へ向けて一歩近づけるかもしれません。
まとめ
スターバックスの成功事例を基に、マーケティング4.0を考察してきました。
世界中に展開している大手コーヒーチェーンが実践する大企業のマーケティング戦略であるのは否めませんが、注目したいのはスターバックスが地域密着を重視している点。
地域性のあるビジネスや、実店舗型のビジネス等、特定地域にターゲットを絞って展開している企業は、「顧客満足度の追求」「バイラル拡散」「立地へのこだわり」「高単価が取れるプロダクト」「競争をしない独自路線」等の施策は、非常に参考になると考えられます。
店舗型ビジネスで成功を目指したい方は、ナンバーワンというより、オンリーワンを目指してマーケティング4.0を実践してみてはいかがでしょうか?
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